「特定技能」は、人手不足の業界で外国人材を受け入れるための、今もっとも注目されている在留資格です。
特定技能制度は、日本国内で深刻化する労働力不足に対応するために2019年に創設され、一定の技能や日本語能力を持つ外国人を受け入れる仕組みです。
特に介護、外食業、建設などの16分野で活用が進んでおり、多くの企業が即戦力としての外国人材に期待を寄せています。
例えば、ある外食チェーンでは特定技能の外国人スタッフを複数名採用し、人手不足の店舗運営を安定化させました。
就労を希望する外国人側にとっても、中長期的に働ける制度として人気が高まっています。
このように、「特定技能」は企業にとっても外国人にとっても大きな可能性を持つ在留資格です。
外国人がホテル・旅館で働くには?―特定技能「宿泊」分野の制度を徹底解説
1. はじめに
インバウンド観光の回復とともに、日本の宿泊業界は再び活気を取り戻しつつあります。
しかしその一方で、ホテルや旅館の現場では深刻な人手不足が続いており、外国人材の活用が急務となっています。
そうした背景のもと導入されたのが、外国人が宿泊施設で就労できる「特定技能(宿泊分野)」という在留資格です。
この記事では、「宿泊」分野における特定技能の制度内容や取得要件、企業側の対応義務などを、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
2. 特定技能「宿泊」分野とは?
「特定技能」は、日本国内で人手不足が深刻な分野に限って、外国人の就労を認める在留資格制度です。
「宿泊」分野では、ホテルや旅館での業務に直接従事する外国人材が対象となります。
対象業務の具体例:
- 宿泊施設のフロント業務(チェックイン・チェックアウト対応など)
- 企画・広報(イベントの企画、外国人観光客向け情報発信など)
- 接客(レストランでの配膳、売店での販売業務など)
- 客室清掃やベッドメイキングなどの裏方業務
※管理職的業務や高度な通訳・翻訳業務などは対象外です。
3. 特定技能「宿泊」の基本情報
項目 | 内容 |
在留資格名 | 特定技能1号(宿泊分野) |
就労対象業務 | 宿泊施設におけるフロント・接客・清掃等 |
在留期間 | 通算5年まで(1年、6か月、4か月単位で更新) |
雇用形態 | 直接雇用のみ(派遣・請負は不可) |
家族帯同 | 不可(配偶者・子の帯同は認められません) |
4. 外国人が取得するための条件
(1) 宿泊分野特定技能評価試験に合格
「宿泊業技能測定試験(宿泊分野特定技能評価試験)」に合格する必要があります。
試験は、日本国内および海外(例:フィリピン、インドネシア、ベトナムなど)でも実施されています。
試験内容:
- 接客対応・施設案内の基本知識
- 日本の宿泊マナー
- 実務的な対応力など
(2) 日本語能力の証明
以下のいずれかの日本語試験に合格していることが必要です。
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
(3) 技能実習制度からの移行
宿泊分野は技能実習制度の対象ではないため、技能実習2号からの移行は不可です。
すべての申請者が評価試験と日本語試験に合格する必要があります。
5. 受け入れ企業側の義務と対応
外国人を雇用する宿泊施設(特定技能所属機関)は、以下の義務を負います。
- 直接雇用であること(派遣禁止)
- 報酬は日本人と同等以上
- 労働・社会保険の加入
- 生活支援計画の作成と実施
- 日本での生活ルールや習慣の説明
- 住居確保の支援
- 日本語学習の機会提供
- 相談・苦情対応 など
これらの支援は、登録支援機関に委託することも可能です。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 外国人がフロント対応で日本語を話せる必要はありますか?
はい。
接客業務においては日本語でのやりとりが基本です。
そのため、JLPT N4レベル以上の日本語力が求められます。
Q2. ナイトシフトや宿直勤務も可能ですか?
可能ですが、労働基準法を遵守し、適正な勤務時間と休憩時間を確保する必要があります。
Q3. 5年後に引き続き働くことはできますか?
宿泊分野は現時点で特定技能2号の対象外です。
5年を超えて就労するには、他の在留資格への変更が必要となります。
7. まとめ
特定技能「宿泊」分野は、観光立国を目指す日本にとって、非常に重要な外国人材受け入れ制度です。
評価試験と日本語能力試験の合格が必要ですが、制度を正しく運用すれば、外国人材と企業の双方にとって大きなメリットがあります。
当事務所では、在留資格の申請、登録支援機関の紹介、受け入れ体制の整備支援など、外国人材の採用を包括的にサポートしています。
宿泊業での外国人採用をお考えの施設様は、ぜひ一度ご相談ください。
「特定技能」は、企業と外国人の双方にメリットがあり、制度を正しく理解し活用することが重要です。
一方で、申請には技能評価試験や日本語試験の合格、受入れ体制の整備、支援計画の策定など、専門的な知識と手続きが求められます。
不備があると不許可や手続きの遅延につながるため、確実な準備が不可欠です。
「ならざき行政書士事務所」は、在留資格認定証明書の申請から、変更・更新の手続き、受入れ企業の支援体制づくりまで、特定技能制度の活用を総合的にサポートしています。
初めて外国人を雇用する企業様にも、わかりやすく丁寧にご案内いたします。
特定技能制度を適切に活用することで、人材不足を補いながら国際的な人材との連携が可能になります。
「ならざき行政書士事務所」は、その第一歩を全力でサポートいたします。
ご相談・ご依頼は、こちらのページからお寄せください。
参照記事等
出入国在留管理庁のウェブサイト「宿泊分野」
(最終閲覧2025年6月5日)
宿泊業技能試験センターのウェブサイト「特定技能試験」
(最終閲覧2025年6月5日)